2050年の成田

空港圏未来予想図by佐藤ひとし

閑話休題(それはさておき) 秋葉哲さんのこと

 20数年前、夏休みの暑い日でした。芝山町岩山の秋葉哲さん(故人)のお宅に、小学生の息子・娘人と遊びに行きました。

「お父さんはどんなお仕事をしているの?」

   そんな疑問に応えようと、空港と周辺地域を案内したのです。いろいろ見たあと、思いついてアポなしで秋葉さん宅に向かいました。秋葉さんの住まいは芝山町岩山地区、A滑走路南側の飛行ルート直下です。

 

   豪壮な古民家の上空を、ジャンボ機が爆音をふりまきながら通過していきます。秋葉さんは、空港反対同盟(熱田派)の長老でした。温厚な方です。騒音にもかかわらず、玄関も戸障子もあけっぴろげ。防音サッシなどありません。話ができなくなります。

「うるさくないの?」

「ははは、まぁ、慣れてるからよぉ。夏は暑かっぺ、でも自然の風がいいんだ」

    だされたスイカをほおばりながら、子どもたちは不思議なようすでした。

 

 成田に赴任する直前、昭和天皇大喪の礼のおり、羽田空港でみたコンコルドは、それは凄まじい爆音でした。成田空港はといえば、ジャンボ機だらけでした。エンジンは4発です。

 いまのボーイングエアバスは、双発です。エンジン性能が飛躍的に向上しているのです。CO2を排出しないという環境性能が重視されるようになり、燃費はぐっと向上しました。エンジンの径も大きくなり、騒音を空気の流れで騒音を包み込むようなっています。最大の旅客機、エアバス320型機ですら、とても静かに、優雅に離着陸します。

 

 空港の24時間運用について書きましたが、騒音対策の重要さを否定するつもりはありません。ただ「眠れないなくなる」「生活できなくなる」というようなことにはならないでしょう。芝山町の知人たちも、あまり心配していません。

「お金を落としてくれてんだからよう、飛行機が」と笑い飛ばしています。

 もっと静かなハイブリッド機や完全電動機が実用化されれば、「騒音地域」は「一等地」になるでしょう。内陸空港だからこそのマイナスが、プラスに転換されるのです。