2050年の成田

空港圏未来予想図by佐藤ひとし

行政サービスは維持できるか?

広域連携・圏域・成田空港市

 急激な少子高齢化で、自治体の9割は人口減少にさらされています。お金と人手が少なくなる自治体は、行政サービスを維持できません。そこで総務省は「圏域行政」という考えを打ち出してきました。自治体単独、もしくは現在進められている自治体の広域連携で少子高齢化に対応できないなら、いっそ「圏域」を行政単位にしようというのです。

 

 成田空港圏の9市町は、すでに空港圏自治体連絡協議会をつくり、空港問題の意思決定を担う「四者協議会」のメンバーになっています。ある程度、広域連携や圏域への下地はできています。とはいえ、空港の機能強化に協力的な成田市芝山町多古町などと、新たに第3滑走路(C滑走路)の騒音問題を抱えることになった横芝光町などには、「温度差」があります。前者は固定資産税など空港からの「家賃」が入るのに、後者は「騒音がふえるだけじゃないか」という訳です。

 

 実際、空港拡張計画を認めるか、カーフュー(空港の運用時間)延長を認めるか、といった重要な問題で、9市町の足並みがそろうにはかなりの時間がかかりました。空港のありかたに、周辺自治体が口を出せるようになったのは良いことです。30年前は国側と反対運動のはざまで、なにも手を出せない傍観者にすぎませんでした。大きな進歩ですが、将来もこのままでよいのでしょうか?

 

 成田空港圏は、空港会社の企業城下町でもあります。空港をどう活かすかという展望や構想がバラバラでは、時代の急激な変化に対応できません。スピード感に欠けてしまいます。今後の地域振興についても、自治体レベルの予算では大きな夢を描けないのが現状です。

 

 広域的な観光開発、空港圏の魅力向上や定住人口確保に必要な資金かせぎ、インフラ基盤の整備や維持管理、医療・福祉・教育・介護といった将来的課題も山積みです。9市町がまとまらないと、効果的な政策は進められません。都市計画などの決定権を持った「強い意志と発言力」をもつた自治体が必要だと思います。広域連携、圏域、どんなルートを取るにしても、最低限、空港を取り囲む成田・芝山・多古の3市町は、「成田空港市」としてまとまったほうが、有利です。

 

 最大の課題は、そうした難事業を引き受けられる指導的人材が登場するかどうかでしょう。空港とともに生まれ育った世代に期待しています。